イタリアンレザーとは?その魅力と特徴を歴史から紐解く

イタリアンレザーとはイタリア国内で生産された革の総称を指しています。古くからなめし技術が発達しており「ベジタブルタンニンなめし」と呼ばれる生産方法を専門とする世界最高峰のなめし工場が数多く存在しているのも特徴です。

フィレンツェにあるアルト川

写真・フィレンツェにあるアルト川。この川沿いには多くのなめし工場が並んでいるのですが、その理由も歴史を遡る事で見えてきます。

イタリアでは、このなめし技術が評価され革の産地として有名になってきた経緯があります。イギリスのブライドルレザー、アメリカのコードバンレザーと並び、世界3大レザーと評されており、世界の皮革生産地の中心地の1つとなっています。


イタリア植物タンニンなめし協会

写真・CONSORZIO VERA PELLE ITALIANA CONCIATA AL VEGETALE(イタリア植物タンニンなめし協会)


注意しなければいけないのはイタリアのレザーが全て「ベジタブルタンニンなめし」で作られているわけではないということです。

そもそも革のなめし技術には「クロムなめし」「タンニンなめし」の2つがあり、今日ではクロムなめしで作られたクロムレザーと呼ばれる製品が8割以上を占めています。なめしの工程が違うのですが(詳しくは長くなるので省きます)、クロムなめしでは化学薬品を使用するため均一な品質のものを安価に大量生産できるといった特徴があります。

だからと言ってクロムレザーが悪質という訳ではなく、色味や革の柔らかさなどの経年変化が起きづらく、扱いやすいという良さもあります。用途と使う方の好みにより「クロムレザー」と「タンニンレザー」を選んでいただければと思います。




イタリアンレザーがトスカーナに集中している理由

ここからは歴史を遡ることでイタリアで皮革産業が栄えた理由と魅力に迫りたいと思います。

エトルリア人を描いた壁画

イタリアでなめし技術が盛んになったのは紀元前8世紀のエトルリア文明まで遡るといわれています(上記写真は墳墓の壁に描かれたエトルリア人を描いた壁画)。イタリアの先住民であるエトルリア人によりベジタブルタンニンなめしの技術は飛躍的に向上しました。

この初期の進歩の鍵となったのが壊れづらい耐久性のあるサンダル開発への追求がキッカケのようです。そしてローマ時代には衣類、鞄、盾などあらゆるものに使用され皮革産業はイタリアにおいて社会的重要性を増していきます。

写真・引用元 wikipedia Etruscan art


エトルリア文明について少しだけ解説

イタリア半島北部から中部(フィレンツェやボローニャあたり)に紀元前9世紀から紀元前1世紀まで住んでいた先住民がエトリアル人です。

アーチ門とキメラのブロンズ像

初期のローマ人はエトルリアの高度な文明を模倣したとされ、ローマ建築で有名なアーチ型の建築は元々はエトルリア文明の特徴であったといわれています。
上記写真はエトルリア時代に作られたアーチ門とキメラのブロンズ像です、技術力の高さはもちろんですが芸術性も高いことが伺えます。

写真・引用元 wikipedia Etruscan art


イタリア南部まで広がっていたなめし工場


ポンペイ遺跡

やがてエトルリア文明はローマ帝国に吸収されていくのですが、この時期になると複雑な革細工がローマ帝国全体に出現し始めました。
ポンペイ遺跡(イタリア南部ナポリ)の発掘調査により、かつて繁栄していた大規模な革鞣し工場の跡地も発見されています。

写真・引用元 pompeiisites


歴史を紡ぐイタリア皮革組合

皮革労働組合

1282年(日本の鎌倉時代)にはフレンツェで初めての皮革労働組合(Arte dei Cuoiai)が誕生します。皮革組合ができたことで厳格な品質基準を定めることによりイタリアの皮革産業は国際舞台で高い競争力を維持することに成功していきます。
写真はフレンツェの様々な業種の組合のマーク。右下のGaligaiのマークが皮革労働組合のマークになります。

写真・引用元 wikipedia Guilds of Florence


トスカーナ地方の地図

エトルリア文明の誕生、ローマ帝国の発展から今日に至るまでもトスカーナ地方(赤い線で囲まれている地域)には多くのなめし工場が存在しています。特にフレンツェからピサまでのアルノ川のほとりに工場が集まっているのは歴史を紐解く事で見えてきます。


プエブロレザー証明書

2022年現在ではトスカーナのベジタブルタンニンなめしの伝統を守るためにCONSORZIO VERA PELLE ITALIANA CONCIATA AL VEGETALE(イタリア植物タンニンなめし協会)が存在し皮革の品質を管理する重要な役割を担っています。


イタリアンレザーが愛される理由とは?

タンナーの作業風景

長い歴史はもちろんですが何世代にも渡り皮革職人の知識の継承がしっかりと行われているようです。

皮とタンニンは自然由来のものなので気温、湿度、原皮などでなめしのレシピが変わってきます。特に植物タンニンなめしは長くて複雑な工程が存在するためタンニンのブレンドや時間などで仕上がりに大きな変化が生じます。祖先から伝授した豊富な知識がイタリアンレザーの基本であり品質を保っています。

植物タンニンなめしで作られた革は経年変化が美しく多くの革好きに愛されています。

そして伝統を大事にしながらも既存の技術を革新させることも忘れていないようです。現在、なめし機の80%はイタリアで生産されているなど今日も進化を続けています。


イタリアンレザーの経年変化を紹介

com-onoで実際に使っているイタリアンレザーの経年変化した商品と革を紹介します。


人気のプエブロレザーの経年変化(エイジング)

革の経年変化が美しく、最大限に楽しめるプエブロレザー。他の革に比べ経年変化が早くはっきりとしたエイジングが出ます。

プエブロレザーの経年変化(エイジング)を紹介

使いはじめのザラザラとした表面の質感から使い込むにつれ、少しずつ毛羽立ちが寝てしっとりとした柔らかな手触りになります。 色味も美しい光沢のある飴色へと変化し、さらに使い込むほど色味は深みをおびていきます。
日常使いの中でつく傷やシミ、色斑も馴染み味わいのひとつとなり、 経年変化の表れ方は使う人によって異なるため日々育てる楽しみがあるのもプエブロレザーの特徴といえます。


三ヶ月から半年ほどの経年変化を紹介

実際にcom-onoで使っているカラーの経年変化状態になります。

プエブロレザーの経年変化(エイジング)を紹介
プエブロレザーの経年変化(エイジング)を紹介
プエブロレザーの経年変化(エイジング)を紹介
プエブロレザーの経年変化(エイジング)を紹介

発色の美しさも特徴。ドラーロレザーの経年変化を紹介


ドラーロレザーの経年変化(エイジング)を紹介
ドラーロレザーの経年変化(エイジング)を紹介

写真は新品(左側)と半年程度使用したもの(右側)を並べたものです。
ドラーロレザーは発色の美しさも特徴で、革の素材感を活かす為に透明度が高く発色の良いアニリン染料で仕上げをしています。

さらにベジタブルタンニン鞣しなならではの使い込むほどに馴染み色艶の経年変化もしっかり楽しめる革となっております。



イタリアンレザーの解説は、いかがでしたでしょうか?

イタリアの歴史を紐解くことでトスカーナにタンナーが集中している理由も見えてきます。

日本にも漆で革にプリントする印伝革、ベジタブルタンニン鞣しを行っている栃木レザー、徳島の藍を使い京都で革を染色するsukumo leatherなど、、、、世界的に評価の高い皮革工場もあります。

今後、com-onoでもいろいろな皮革工場を視察し商品開発の幅を広げていきたいものです。




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